大西　こちらの十文字屋さん、現在ご夫婦で経営されている、地域でも評判のお店とうかがっていますが、まずはお店の成り立ちから聞かせていただけますか？
矢吹　この十文字屋は先代である父親が、平成元年にラーメン屋として始めたお店でした。平成５年あたりから始めたカツ丼がお客様に好評で、今はラーメン、餃子と並んで看板メニューとなっています。私は平成１８年から２代目店主として父親の後を継ぎ、現在に至っています。
大西　ご主人はこちらのお店を引き継ぐ以前はどのようなお仕事をされていたのですか？やはり飲食店関係とか？
矢吹　それが全く関連性がなくて、実は内装の職人をしていました。
大西　たしかに職種としては全く異なりますね。この転職にはどういった経緯があったのでしょう？
矢吹　以前は仕事柄、県外に出かけることも多く、これまで続けてきて少し落ち着きたくなったというか、飽きてきたというか…、そこで、冗談めかして「店でもやってみようか」と口にしたところ、それがなぜか本気で取られまして（笑）。まあ、先代が高齢ということや、体を壊したりしたこともあって、状況的に引くに引けなくなったというところでしょうか。

大西　しかし、畑違いの仕事で大変なスタートだったのでは？
矢吹　素人同然のスタートでしたからね。多少は教わることもありましたが、ほとんど見よう見まねから入っていきましたから、失敗も多かったですよ。
大西　奥様はご主人が始める以前から、お店には出ていらしたんですか？
矢吹　はい、先代についてすでに十数年の経験を積んでいましたので、主人が慣れるまでは精一杯バックアップさせていただきました（笑）。
大西　なるほど、ご主人からはさぞ、頼れる奥様に見えたことでしょうね（笑）。
矢吹　そうですね（笑）。いろいろ覚えるのも大変でしたが、何よりも接客の仕事は職人をしていたころと違って自分からお客様に声をかけていかないといけないんですね。それが「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」すらなかなか言えず、ストレスとプレッシャーで１日寝込んだこともありましたよ。
大西　いろいろ苦労もあったようですね。でも、その苦労が報われたんじゃないでしょうか。看板メニューの評判を聞いて、県外からのお客様も多いと聞いていますよ。
矢吹　おかげさまで、遠方からのツーリングのお客様など目立ちますね。一度来店されたお客様がインターネットの掲示板に書き込みされて、それをご覧になったお客様がまた足を運んでくれたりしているようですね。
大西　インターネットによる口コミですね。では、その評判のメニューについてご紹介いただきましょう。まずは、お店の名前がついた「十文字ラーメン」ですが、地域的にこのあたりだと喜多方ラーメンをイメージしますが…
矢吹　はい、喜多方ラーメンのちぢれ麺で、スープは豚がベースの、都心と比べると少し濃い目の醤油味ですね。麺の上には野菜たっぷりの「あん」がかかっています。普通の丼ではあふれてしまうので、器には本物のスリバチを使っています。
大西　喜多方ラーメンは濁りがなくて、あっさりしていながらもコクがあって、ファンの方も多いですよね。それからもう一つの看板メニューの磐梯カツ丼ですが、こちらも相当なボリュームのようで…！やはり、すごいですね。カツが丼からはみ出ていますし。一般的な「カツ煮」ではなくソースカツ丼なんですね。
矢吹　脂身の多い肩ロースを揚げたものを、十文字屋オリジナルソースに浸しています。４００ｇくらいありますので、女性の方やもう少し控えめな量でいただきたい、という方にはミニカツ丼もありますよ。
大西　どちらもおいしそうですね！県外から来られるお客様が多いのも納得です。それでは最後になりますが、ご主人からこの記事を読まれる読者へ向けて、メッセージをいただけますか？
矢吹　他では味わえない十文字屋の看板メニューを、ぜひ一度召し上がっていただきたいですね！今後は、人気メニューといえども毎度毎度食べていれば飽きてくるお客様が出てくるのも仕方のないことだと思います。そんなお客様がいつまでも足を運んでいただけるように、新たな看板メニューを考え、どんどん提供していきたいと思っています。会津に来られた際にはぜひ、十文字屋にお立ち寄りください。お待ちしています。