高円寺にある心理相談室サウダージ



谷 高円寺駅北口から徒歩4分。サウダージさんの入っている建物は、個性的なテナントがお店を出しているおもしろいビルですね。

 

前田 そうなんですよ。1階には、今人気のピザ屋さん「センプレピッツア」。2階には、
スターウォーズのグッズ販売で有名な「STARCASE」や、怪獣のソフビ人形などを扱っている「一番星」、ボーカル教室「M’s」などが入っているとてもユニークなビルです。

 

谷 そういうビルの中に心理カウンセリング・ルームがあるなんて、それもユニークですね。どうしてここで開業されたんですか?

 

前田 最初は新宿や渋谷などでの開業も考えていました。けれども、そういった都心部の繁華街、ビジネス街での開業には違和感も出てきたんです。カウンセリングに来る方の中には、ストレスやうつで会社を休んでいる方、ひきこもりや不登校の方も多くいらっしゃいます。カウンセリングを受けてせっかく気持ちが楽になっても、忙しそうなビジネスマンや学生さんたちが大勢いる街中に出たとたんに、また、働いていない自分、学校に通えない自分はダメ人間だと感じ始めてしまいます。そういう気持ちにならないように、高円寺での開業を決めたんです。

 

谷 どうして高円寺だったんですか?

 

前田 高円寺は、スーツ姿のサラリーマンをあまり見かけない地域です。よくも悪くも、平日の昼間から自由な服装の若い人たちが、あまりせかせかせずに街を歩いています。それに、どこの街にでもあるチェーン店ばかりではなく、うちのビルに限らず個性的なお店が非常に多いんです。カウンセリングの行き帰り、そういう高円寺の街を歩いているうちに、都心の大企業であくせく働いたり、偏差値の高い学校に入るためにがんばるだけが生きていく方法ではないと、自然に考えが変わってくるんじゃないかと思ったんです。

 

谷 たしかに高円寺は、劇場やライブハウス、古着屋さんや雑貨屋さんなどがたくさんあって、若者文化の発信地という感じですね。しかも庶民的な雰囲気もたっぷりです。  ところで、前田先生はどうしてカウンセラーになられたんですか?

 

前田 私は以前、小学館でまんが雑誌の編集者をしていました。仕事はおもしろかったですし、職場環境が病気の主な原因ではないのですが、働いているうちに私自身がうつ病やアルコール依存症になってしまったんです。病気の回復過程で、多くの精神科医やカウンセラーの先生、また援助スタッフの方々にたいへんお世話になりました。また、たくさんの同じ病気の当事者や他の精神疾患を抱えた仲間たちとも出会い、お互いの回復を助け合ってきました。そういう自分自身の経験やネットワークを生かした本を作ろうと思い、書籍編集部に異動させてもらって、メンタルヘルス関連の本を編集するようになったんです。

 

谷 ご自身の病気まで本にしてしまうなんて、さすが編集者ですね。(笑)

 

前田 私の担当医だった精神科の先生はじめ、回復過程で築いたネットワークから、たくさんの方々に執筆や取材協力していただいたんです。本を作るための取材や編集作業の中で、さらに多くの専門家の方々や当事者の方々に出会い、またこちらも関連書籍を読み漁ったので、自然に基礎的な勉強もでき、現場の空気もより知ることができました。私のカウンセリングをずっとしてくださった先生にも、執筆をお願いしました。その先生が開発したFAP療法という最新心理セラピーがあるのですが、私も取材のためにFAPのセミナーに参加するなどして勉強しました。それからどんどん興味が湧いてきて、FAP療法の上級資格まで取得できてしまったんです。そのうちに自分もカウンセラーになれるだろうかと考え始め、その先生に相談したところ、「だいじょうぶ。やれますよ。」という返事をいただけちゃったんですよ。

 

谷 そうだったんですか。開業されたのはいつですか?

 

前田 開業してからは2年半ぐらい(2015年1月現在)です。でも、患者だった頃から考えると、メンタルヘルスの現場にはもう20年ぐらいいることになりますね。

 

谷 ところで、こころの悩みというとよく「うつ病」のことを耳にします。やる気が出ないとか、先のことが考えられないというのは、うつ病の症状なんですか?

 

前田 今おっしゃったような「やる気が出ない」「将来の見通しがつかず不安になる」など以外にも、「気持ちがふさぐ」とか「不眠」などは、代表的な「うつ」の症状です 。 私もうつ病の経験者ですが、症状が一番ひどかった時にはそういった症状が強く出ました。。食欲はまったくないけれど何か食べなければと思って、徒歩数分のコンビニまで往復しただけでその日一日の全エネルギーを使い果たしてベッドに倒れこんでしまう。朝、歯を磨いて顔を洗うだけで、またエネルギーを使い果たして一日寝込んでしまう。体が疲れ切っているのに、夜2、3時間眠っただけで夜中にぱっちり目が覚めてしまい、眠って疲れを少しでも取りたいのに全然眠れない。気分はふさぎきって、あらゆることに興味も意欲も湧かない。――そういうひどくつらい症状を経験しました。 ただ、幸いわたしのうつ症状は薬で治るものだったのですが、うつ症状の出る状態というのは、薬で治せるいわゆる「うつ病」だけではありません。ふさぎこんだ気持ちや死にたくなるほどの生きづらさ、不眠などの原因が、何かのトラウマの場合があります。そういうケースでは、薬よりもカウンセリング、特に私が使っているFAPは非常に有効です。また、うつ症状の原因がアルコールや薬物などの物質の影響の場合や、更年期障害、甲状腺の病気など身体的な問題だということもあります。うつ症状や不眠を感じて薬を飲み続けているのに改善がない場合は、うちのカウンセリングを受けていただければ、いろいろな角度からお話をうかがわせていただくこととFAPによる診断で、その症状の原因を正しくつかむことができ適切な処置も取れます。