うつ症状から失恋相談まで?どんな悩みでも対応します。

 

 

谷 なるほど。ご自身がそういったこころの病気を経験されて、考え方は変わりましたか?

 

前田 それは大きく変わりましたね。今はうつ病はじめ精神疾患のことがだいぶ世の中に理解されるようになってきましたが、ちょっと前までは、カウンセリングや精神科に通っている人はおかしな人だという偏見がついてまわっていました。私自身も、以前はそういう偏見がなかったわけではありません。しかし、自分自身の経験から、そういう偏見こそが回復を妨げると実感するようになりました。 今でもそういう偏見は残っていて、「根性がないから」「こころが弱いから」、そういう病気になるんだという科学的裏付けのない精神論を述べる人もまだまだ多いですね。「強いこころを持てば病気は治る」なんてお説教をされたら、ただでさえ生きるのがつらくなっている人はますます追い詰められて、病状はいっそう悪化してしまうものです。それに、「強いこころを持て」と言われたって、こころを強くする具体的な方法なんて、実は誰もわかっていないですよね。そんな根性論やお説教は、百害あって一利なしです。
 うちに相談にいらっしゃる方の大半が、自分に問題が起きているのは自分がダメな人間だからだ、弱い人間だからだと考え違いをしています。ご自分を責めていることが非常に多いんです。ですから、当事者の方にもご家族や周囲の方々にも、まずその病気や問題のことをよく理解してもらうように、そして自分を責めないようにというところに力を入れています。

 

谷 サウダージさんのようなカウンセリング・ルームにいらっしゃる方は、精神科には通いたくないという方が多いのでしょうか?

 

前田 そういうわけではありません。精神科・診療内科に通院しながら、並行してカウンセリングも受けたいという方も多いですよ。ただ、ずっと通院しているのに状態がよくならないとか、薬をずっと処方されているけれどあまり改善がないとか、薬を飲むようになってからかえって状態が悪くなったという方もかなりいらっしゃいます。私は、一般的な精神科クリニックよりも時間をかけてお話をうかがって、問題の原因をなるべく正確にとらえるようにしています。さらに、私はFAP療法を使って原因の特定も行っています。原因特定の精度は高いと思っていますよ。

 

谷 相談する内容がそんなに深刻なものでなくてもいいんですか? たとえば、失恋した後でなかなかそのショックから立ち直れなくて、悲しみが抜けないとか。

 

前田 もちろんです。それに、お金と時間を使ってカウンセリングまで受けようという失恋は、実はけっこう深刻だと思いますよ。 失恋をして落ち込まない人はいません。ただ、失恋してから1年も2年も経っても、その相手のことを忘れられないということだと、カウンセリングが必要かもしれません。そのままでは、なかなか新しい人生が始まりません。それに、場合によってはストーカー行為を始めてしまう危険もあります。逆に、失恋したと思ったら1週間後にまた新しい恋人を見つけて、その人とはまた短期間で別れて――というように次々につきあう相手が変わっていく方も、相談に来ていただけたら、もう少し落ち着いてご自分に合う相手が選べるようになってきます。それから、落ち込み方が激し過ぎて、失恋のたびに自分を傷つけるような行為をしてしまうとか、同じようなタイプの人に恋をしては手痛い失恋を繰り返しているとか、そういう場合もカウンセリングを受けていただくといいと思います。 恋愛のご相談では、生まれ育った家族環境のことを詳しく聞かせていただけると、問題の原因や改善の方向性が見えてくることが多いですね。

 

谷 欧米の人は、日本人よりもずっと気軽に精神科医療やカウンセリングを利用していると聞きます。友人や家族に相談できないようなことがあったら、軽い気持ちで先生に相談してもいいんでしょうか?

 

前田 はい。どんな相談でもうかがいますよ。

 

谷 さて、先生の使っているというFAP療法のことを教えていただきたいのですが。

 

前田 FAP療法は、ミラーニューロンという共感のはたらきをする脳の部位を利用したセラピーです。他人の行動や感覚、感情を、自分のもののように感じとってしまうはたらきをする部位が脳内にあるらしいということが、最近の脳科学研究でわかってきました。その部位を「鏡の神経」=「ミラーニューロン」と呼ぶようになったのです。実は、私たちは他人の感情や感覚を自分のものように感じとってしまう経験を、けっこう日常的にしています。「もらい泣き」とか「あくびが移る」とかがそうですね。緊張している人の近くにいるだけで、自分には緊張する理由などなくても緊張してきた経験がある方も多いと思います。 FAPでもうひとつ利用するのは、脳と身体のつながりです。脳やこころと身体のことは分けて考えがちですが、たとえばストレスで下痢をするとか胃かいようになることがあるのがよく知られているように、脳と身体には深いつながりがあります。脳・こころに動きがあれば、身体にも反応が出ることは多いのです。来談された方のお話をうかがいながら、私は問題のポイントになりそうなところで、自分の身体のどこかに反応が出るかどうかをモニタリングしています。ご来談者の深い悩みを私がミラーニューロンのはたらきで感じ取れていれば、脳と身体のつながりによって、私の身体のどこかに反応が出てくるからです。その反応を見て、私がその方の悩みのポイントになりそうなキーワードを伝えます。たいていの場合、そのキーワードを考え続けていてもらうと、その方の身体のどこかにも痛いところや違和感を感じるところが出てきます。その身体反応に注目を向けていてもらいながら、私の方でその体の反応がなくなるまでセラピーを行っていくというのが、FAPの大まかな手順です。