「もっと身近に、もっと手軽に」── 心理カウンセリングを届けるために、私が選んだ道
企業勤務から心理の世界へ
滝沢 今日は「心理カウンセリングHarema」の代表、岸本先生にお話を伺います。まず、心理カウンセラーという道を選ばれた経緯から教えてください。
岸本 はい。幼少期の頃から、同じ環境で同じ体験をしても人によって感じ方が違うのは何でだろうという、人に対する興味はずっとあったと思います。ただ、進路としては全く違う分野を学んで、企業に就職しました。その職場でさまざまな人の、ストレスの受け方に違いがあることに気づきました。私自身は比較的ストレス耐性があり、何とか前向きに働けていましたが、仲の良かった同期が精神的に参ってしまい、「なぜこんなに思い詰めて苦しくなってしまうのか」ということに強い興味を持ちました。
滝沢 そこから大学・大学院へと進まれたんですね。
岸本 はい。会社に勤めながらいろいろ調べて、最終的には退職して臨床心理士の資格を取るために大学院へ進みました。最初は知らないことばかりでしたが、学ぶうちに「あ、私はこの仕事に向いているかも」と思うようになりました。人の話を聞き、客観的に物事をとらえる力は、幼少期から人それぞれに感じ方が違うことに興味があったからこそ、自然と備わっていたものだったように感じています。
向き合う力と“線引き”の大切さ
滝沢 実際にカウンセリングを学ぶ中で、ご自身がつらくなることはありませんでしたか?
岸本 もちろん、悩みの深さに圧倒されそうになることもあります。でも、自分と相手の間に適切な“線引き”をすることが大切だと学びました。相手の話をしっかり受け止めつつ、自分の感情は持ち込まない。そうした距離感が保てるからこそ、今も苦しくならずに続けられています。
滝沢 クライアントとの距離のとり方も大切な技術なんですね。
岸本 はい。それができずに自分自身が苦しくなってしまうカウンセラーも少なくないんです。なので、どこまでが自分の責任で、どこからが相手の人生か、しっかり区別する力が求められます。
対人関係療法というアプローチ
滝沢 カウンセリングにもさまざまな療法があると伺いましたが、岸本先生が得意とするアプローチは?
岸本 「対人関係療法」というものを得意としています。これはうつ病や不安障害など、ほとんどの症状の背景に人間関係の課題があるという考えに基づいています。人は皆、他者との関係の中で生きていますよね。だからこそ、その関係性を見直すことで症状が改善するケースが多いのです。
滝沢 具体的にはどんな進め方をするんでしょう?
岸本 まずしっかりとヒアリングをして、その方に最も合った方法を提案します。対人関係療法の特徴のひとつに「回数が決まっている」という点があります。だいたい12~14回(本来は12〜16回ですが、私は14回で終わらせることを目指し、残り2回はご本人と相談して必要であれば実施することにしています。)で一旦区切るんですね。
滝沢 それはなぜなんでしょうか?
岸本 明確な区切りがあることで、モチベーションを維持しやすくなりますし、終結の目処がないと依存的になるリスクにも繋がります。「ここまでに自分の変化を感じられるようになろう」という目標を捉えやすくもなります。完全に治すというよりは、自分で考え、行動する力を取り戻す。その土台を作るためのセッションなんです。
思考よりも「言い方」を変える
滝沢 思考の癖って、なかなか変わらないように思うのですが…。
岸本 おっしゃる通りです。だから、対人関係療法では思考自体を変えるのではなく、「伝え方」や「表現」を変えることに注目します。たとえば、怒りをそのままぶつけるのではなく、どう言えば伝わりやすいかを一緒に考える。これなら実践もしやすく、相手との関係も少しずつ改善されていくんです。
滝沢 なるほど。難しそうに聞こえていた療法も、実はすごく実践的なんですね。
岸本 そうですね。誰でもできるような、小さな言葉の使い方から始められるのが特徴です。
クライアントの変化と手応え
滝沢 実際に対人関係療法を受けた方の変化で印象的だったことはありますか?
岸本 そうですね、親子関係に悩まれていた方が「以前よりも穏やかに話せるようになった」とか、仕事の人間関係が原因で来られた方が「気が楽になった」と話してくれたことがあります。劇的な変化というより、少しずつ、自分らしさを取り戻していくプロセスに寄り添うイメージです。
滝沢 相談に来られるのはどのような方が多いですか?
岸本 女性の方が比較的多いですが、男性の方ももちろんいらっしゃいます。年齢層は幅広く、職場や学校でのストレス、夫婦関係、ママ友との関係など悩みも多様です。でも、共通しているのは「話したいけど話す場所がない」ということかもしれませんね。
開業という決断と、これからの目標
滝沢 現在は独立してカウンセリングルームを運営されていると伺いました。
岸本 はい。今年4月(2025年)にスタートしました。企業カウンセラーや精神科のカウンセラーとしても引き続き活動していますが、もっと身近な場所で相談できる場所を作りたいという思いがあって、自分のルームを立ち上げました。
滝沢 たしかに「クリニックに行くのはちょっと…」と思ってしまう方もいますよね。
岸本 そうなんです。カウンセリングって、もっと気軽に受けられて良いものだと思うんです。日常の中で気持ちが少し詰まったときに、ふらっと立ち寄れる。そんな場所を目指しています。
滝沢 今後の展望をお聞かせください。
岸本 まずは今の場所で、より多くの方に知ってもらえるように努力したいです。そして、実際にカウンセリングを受けてくださった方が、自分らしく、いきいきと毎日を過ごせるようになっていく。そのお手伝いができたら、これ以上の喜びはありません。将来的には、自分なりのカウンセリングスタイルをさらに深めていきたいですね。いつか「岸本メソッド」と呼べるような、私ならではのアプローチを築いていけたら嬉しいです。
滝沢 本日はありがとうございました。
岸本 こちらこそ、ありがとうございました。
心理カウンセリング Harema 代表カウンセラー/岸本あずさ Azusa Kishimoto
企業勤務を経て、心の問題に寄り添う道を志し心理学を学び直す。北里大学大学院で臨床心理学を修了後、心療内科クリニックや企業内でのカウンセリングを経験。対人関係全般を得意とし、一人ひとりに合った柔軟なアプローチで支援。「ちょっと聞いて」と気軽に話せる場を目指し、心理カウンセリングHaremaを開業。軽やかに、自分らしく生きるためのサポートを提供。東京都港区広尾駅徒歩1分。
公式サイト:http://harema-counseling.com
Instagram:https://www.instagram.com/haremacounseling/
YouTube:https://youtu.be/scEwpj6dtHo
1999年にユニチカ水着キャンペーンガール選出され、2004年フジテレビドラマ「プライド」や「マルモのおきて」、テレビ朝日ドラマ「DOCTORS 最強の名医シリーズ」など数々のドラマ出演。また「秘密のケンミンSHOW」、「林修の今でしょ!講座」などのバラエティーでも活躍!NHKBSプレミアム「晴れ、ときどきファーム」レギュラー出演中!
インスタグラム:@saori_takizawa.official