歴代デザイナーの作品と新作が響き合う、エキシビション「未来のおとぎ話」
イタリア・ローマを代表するラグジュアリーブランド「フェンディ(FENDI)」が、クチュールの卓越した職人技と創造性に焦点を当てたエキシビションを開催した。2026年10月16日から18日まで行われた、LVMH主催のイベント「レ ジュルネ パルティキュリエール」の一環として、ローマ本社の「イタリア文明宮(Palazzo della Civilta Italiana)」で展開された本展。タイトルは「未来のおとぎ話(A Fairy Tale of the Future)」。2015年から2025年までの10年間にわたるフェンディ クチュールの歩みを振り返りながら、伝統と革新が交差するものづくりの世界を紹介した。
歴代デザイナーの作品からひも解く、フェンディの創造性
エキシビションでは、カール・ラガーフェルド、シルヴィア・フェンディ、キム・ジョーンズらが手掛けた作品を厳選して展示。マリア・ルイーザ・フリーザのキュレーションのもと、単に年代順に作品を並べるのではなく、異なるデザイナーの表現が対話するような構成を採用した。
展示の軸となったのは、ファーという素材への探究をはじめ、デザイン、刺繍、アラベスク、インレイ、色彩、パターンメイキングなど、多彩な技法と表現。デザイナーやクチュリエ、職人たちの飽くなき探究心によって、素材や技術が新たな可能性を獲得し、衣服が芸術作品へと昇華されていく過程をたどる。
作品を時代やデザイナーごとに区切るのではなく、一堂に集めることで浮かび上がるのは、フェンディのクチュールに受け継がれてきた独自の創造性。それぞれの作品が持つ個性を尊重しながら、異なる時代のクリエイションが響き合う空間が生み出された。

エキシビション「未来のおとぎ話」
アトリエに息づく、職人技と創造的な知性
本展が伝えるのは、完成した衣服の美しさだけではない。その背景にある、アトリエでの対話や試行錯誤、そして職人たちの技術にも光を当てている。
アトリエは、デザイナーの感性と、ものづくりに携わる人々の知識や技術が交わる場所。新しいアイデアを具体的な形へと変えるため、さまざまな工程を積み重ね、細部にまでこだわりながら一着の作品を完成させていく。
そこでは、芸術的な感性と緻密な技術が融合し、クチュールならではの表現が生まれる。伝統的な技法を受け継ぎながらも、その枠にとどまることなく、新たな表現を追求する姿勢こそが、フェンディのクリエイションを支える原動力となっている。

エキシビション「未来のおとぎ話」
新たなクリエイションを披露する「セレクタ」
展示の後半には、マリア・グラツィア・キウリがフェンディで初めて手掛けた2026-27年秋冬クチュールコレクションから、厳選したルックを紹介する「セレクタ(Selecta)」を展開。過去10年間の作品と新たなクリエイションを並べることで、メゾンの歴史と未来が対話する場を創出した。
キウリが重視したのは、身体の動きや感情に寄り添う衣服のあり方。服を単に身体を飾るものとして捉えるのではなく、着る人の感情や意図、態度が交差する存在として考え、身体の持つ可能性を引き出すデザインを追求した。
その考え方を象徴するのが、身体を拘束するのではなく、動きのリズムに寄り添う軽やかなシルエットだ。身体の上を滑るように動き、優しく包み込む衣服の表現は、ブラックとホワイトのストライプ状のインレイを施したシフォンのルックにも表れている。
さらに「セレクタ」では、ゲストが見守るなか、職人たちが実際の制作工程を披露。完成した作品だけでなく、それが生み出される過程を紹介することで、クチュールを支える高度な技術と、職人の手仕事の価値を伝えた。

「セレクタ」
伝統を受け継ぎながら、未来へと続くクチュール
「未来のおとぎ話」というタイトルが示すように、本展は過去の作品を振り返るだけの回顧展ではない。フェンディが10年間にわたって積み重ねてきた創造性と職人技を見つめ直し、新たなクリエイションへとつなげる試みでもある。
歴代デザイナーの作品と新しいコレクション、そして職人たちの実演を通して浮かび上がったのは、伝統と革新が互いを支え合うクチュールの世界。素材への深い理解、細部に宿る技術、そして自由な発想が一体となることで、衣服は機能や装飾を超えた芸術的な表現へと進化する。
ローマの本社を舞台に、フェンディが培ってきたクラフツマンシップと未来へのビジョンを紹介した今回のエキシビション。そこには、受け継がれる技術を大切にしながら、時代とともに新たな美を生み出し続ける、メゾンの姿勢が表れていた。




